010113

因幡の白兎

サメが…サメが…描けない…。
どう見ても失敗作よね〜。

でも違うのを描く気力と時間がないのです(涙)。
それに没にするのも可哀相な気が…
愚かな母心でござりますする。

ところで、気を取り直しまして、
私のイメージする因幡の白兎は
15.6の男の子です。

ちょっと他兎(ひと)よりアタマが良くて、運動能力にも恵まれてる、
たいていのことは口の上手さで相手を丸め込みなんとかできてしまう。
仲間内では親分格で、他の兎はみんな自分より馬鹿だと思っている。
早い話が世間を甘く見ている男の子。

そんな自信過剰のうさぎ君、
ある日隠岐島から対岸に渡らなければならなくなりました。
さてどうやって渡ろうかと思案の末、名案を思いつきました。
しかも、日頃敵対しているサメ少年グループ、シャーク団に一泡吹かせてやれる
一石二鳥の名案でした。

まずはシャーク団のボスを呼び出し、こう言います。

「君たち最近落ち目だね〜仲間も減ってるようだし、今のうちに
解散したほうがいいんじゃない?」

挑発に乗ったシャーク団のボス、

「何言ってやがる!お前らよりこっちの方がずっと多いぞ!」

待ってましたとばかりにうさぎ君、

「それじゃあ、どっちが多いか比べてみようじゃないか、
君らの仲間を全部集めなよ。僕が数えてみるからさ。」

うまうまと口車に乗ったサメ少年、早速仲間を集め、
こっちの島の海岸からあっちの陸地の砂浜へと一列に並べてみせました。

にんまりほくそえんだうさぎ少年、何て世の中、馬鹿ばかりなんだろう
それに引き換え自分の利口なこと、
得意満面、数えるふりをしながらサメの背を軽やかに踏み渡りました。
そしてあとほんの少しというところで、
どうしても自分の利口さをひけらかしたくなってしまいました。

「やーいお前ら馬鹿じゃ〜ん!
騙されたとも知らないで。
俺はこっちへ渡りたかっただけなんだよ〜ん!」

しかしサメ少年たちは彼が考えていたよりもず〜っと素早かったのです。

うさぎ少年の言葉を聞いた途端、あっという間に襲い掛かり
彼をズタボロの赤剥けにしてしまいました。

才に溺れるを地で行ったうさぎ少年でしたが、これで終わるほど
兎生(人生)は単純ではないのでした。

赤剥けにされた肌に潮風が無情に突き刺さります。
瀕死の状態で泣きながらうずくまっていると
通りかかったのはエリート兄弟の神様たちです。

しかし神様たちはたかだか兎一匹、親身になどなってはくれません。
おもしろがって、海水で身体を洗って潮風に吹かれろなどと
かえって逆効果のでたらめしか教えてくれません。

ますます傷口を広げてしまったうさぎ少年が、
あまりの苦しみになおも泣いていると
今度は先ほどの神様たちの末の弟、大国主の命が通りかかりました。
心のやさしい大国主はうさぎを哀れと思い、

「真水で傷口を洗い、蒲の穂で体を包んでやすんでいなさい。」
と、教えてくれました。

その通りにすると、やがて痛みは退き、
彼は何とか回復することができたのでした。

なんと、世間を嘗めきっていた自信過剰のうさぎ少年は
世間の怖さ、厳しさ、そして情けをも、同時に身をもって体験したのでした。

世間を嘗めてはいても馬鹿ではないうさぎ少年、
自分の浅はかさに気付いてからは
謙虚という衣を身に纏い
やがてはひとかどの兎に成長したのでした。

と、私のイメージの中で因幡の白兎はこうなります。
ちょっと生意気が過ぎる男の子の成長記録の一こまってとこでしょうか。


ここではサメとしていますが、一般にはワニという風に書かれています。
ワニと呼ばれているが、サメのことだったということらしいです。
私も始め、ワニと書いていたのですが、絵はサメなので、(見えない?)
サメだったのならサメでいいのではと思い、サメにしました。

ワニだぞ!とお怒りのかた、お許しくださいませ。